クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
かなりの時間が過ぎてもリカルドは戻らなかった。

リアナは溜息を零し、ソファーから立ち上がった。

ゆっくりと扉に向かい、少しだけ開き部屋の外の様子を伺う。

喉が渇き我慢が出来なくなったので、何か飲み物を貰いたいと思ったのだ。

けれど、目に見える範囲に人の姿はない。

少し迷いながらも、部屋を出て女官の姿を探した。

(……誰もいない。宮殿の中だから誰かいると思ったけど)

部屋からあまり離れるのはよくないだろう。

(水が欲しいけど……)

リアナはがっかりしながら、部屋に引き上げようとした。

その時思いがけない声が聞こえて来た。

「リカルドは私を受け入れてくれるでしょう?」

ドキリとしてその場に立ち止まる。同時に緊張感が全身を回るのを感じていた。

(女性の声。リカルド様の名前を呼び捨てていたわ……)


人の会話を聞くなんていけないことだと思いながらも、声が聞こえて来た部屋へ近づく。

部屋の扉は僅かに開いていていた。

ヴァレーゼ王国では、夫婦以外の男女が締め切った部屋で会うのは良くないことだとされている。

つまり今部屋の中には男女がいるのだ。しかし扉を開くのは躊躇われた。

夫の名が聞こえたのは確かだが、もしかしたら同じ名前の男性がいるのかもしれないし、これ以上こそこそした行動を取るのは自分の中の基準で許されないことだったから。

(……気になるけど、部屋に戻ろう)

しかし、リアナの足を止める、低く聞きなれた声が耳に届いた。

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