ロマンスの王子様
実家を助けるためとは言え、愛のない結婚をすることになった。

しかも、夫となるその相手は最低最悪と言っても過言ではない。

「こんなの売られるのも同然やん!」

私は両手で頭を抱えると、ベッドにガンガンと頭をぶつけた。

「もうどうすればいいんじゃ!?」

芸人のマネをして状況を脱することができるなら、誰だって苦労しない。

芳樹さんの前では“何とかなる”なんて偉そうに言ったけど、とてもじゃないけど何とかなりそうにない。

はっきりと言うと、絶望フラグしかない。

「あー、もう嫌だ!」

私は叫ぶと、ベッドのうえで横になった。

できることならば、何もかも全てを捨てて遠くへ逃げ出してしまいたい…。

「んっ、逃げ出す?」

そのことに気づいて、私はガバッと勢いよく起きあがった。

「結婚って、ある意味では仕事から逃げるための口実として使われる言い訳だよね…?」

私は呟いた。
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