Match maker
「わぁ」

意図せず感嘆の声が漏れた。



一面のコスモス。

花の色ごとに集められ…統一された色合いが

…荘厳だ。色が蓮に似ているからかな。



「…天国ってこんなのかもしれない」



そう思うくらいの、規模。





ピンク、薄いピンク、白、黄、紫、赤…



これは…?何色って言うのかな。



私達はロードバイクを停めて近寄った。



「チョコレートコスモス」



【昔は育てにくかったらしいけど、今は改良されてこの通り】

一面の花から…甘い香りが漂っている。





「あ、じゃあ茶色なのかな?」



「そうだね…茶色というより…」



田中さんが私を引き寄せて、瞼に唇を寄せた。



「今日の雅実の瞼の色だね…」



……誰だ。

いつの間に、こんな…

私をときめかすような人になって



胸がドキドキドキしすぎて

ますます、言いづらい。



だけど言う。だけど絶対に言う。



女には、やらねばならぬ時がある。



次第にコスモスよりも、田中さん本体よりもそのことで頭がいっぱいになってきた。



好きです。



簡単なもんだ。



好きです。



うん、言えそう、言えそう。



「雅実、そこ段差あるか…」



「わぁ!」



思いっきり足をひっかけて、前のめりに…

転け…



ない。



代わりに思いっきり、田中さんの胸で顔を打った。



「好きです!」

痛い!





頭の中の声と実際の声が入れ替わってしまった。

……副音声切り替えが…なされた感じ。



「…うん、大丈夫?本当…綺麗だね」

田中さんが私の赤くなった鼻を見てそう言った。



コスモスが…じゃないけど

このタイミングならそうなるよね。



ふぃー、危ない。





【アホか】

あほでーす。



「ちゃんと、整えて、言おう!」



…あ、また心の声の方が出た。




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