エリート外科医といいなり婚前同居

数日後、家政婦を始めてから最初のお給料が振り込まれた。

礼央さんに言われて銀行に行ってみたら、一流の大学を出て一流の企業に入った人がもらうような額だったので、多すぎますと言ったのだけれど……。

『千波は相応の仕事をしてくれてるからいいんだよ。それで、パーティーに来ていく服でも買って?』

そんなふうに、丸め込まれてしまった。

その時は納得できなかったけれど、よく考えてみれば、パーティーには礼央さんの婚約者として恥ずかしくない格好をしなきゃならない。

だからお給料はありがたくいただいて、それなりに上質なドレスや靴を買わせてもらおうと決めた。

その翌日、ちょうど礼央さんが夜会食で不在だというので、大学の後で近くの大きなファッションビルに行ってみた。

夕食を作らなくていいのも気が楽で、時間を気にせずにゆっくりと各階をぶらぶら歩く。

「あ、あのドレス……」

そのうち通りかかった、シックな雰囲気のセレクトショップ。その店頭でマネキンが着ているカクテルドレスが目に留まった。

色はアイボリーで、デコルテ部分は透け感のある花柄レース。そして、ふわっとしたひざ丈のチュールスカートが、軽やかでフェミニンな印象だ。


< 110 / 233 >

この作品をシェア

pagetop