エリート外科医といいなり婚前同居
「ど、どうでしょう……?」
感想を求めるのが照れくさくて、上目づかいでおそるおそる彼を見つめる。
礼央さんは無言で長いことじっと私を観察したかと思うと、つかつかと歩み寄ってきて試着室の扉に手をかけた。
そして、店内から私たちの姿が見えないように半分扉を閉めると、その一瞬で短いキスを交わし、そのまま至近距離で呟いた。
「綺麗だよ。誰にも見せたくないくらい」
ど、どうしよう……こんな場所でキスするなんて恥ずかしすぎるけど、ドレス姿を褒められただけでこんなにうれしい。
やっぱり私、礼央さんのこと……好き、みたい。
私は頬を熱くしながら、礼央さんを見つめてはにかんだ。
「これにします。礼央さんが、気に入ってくれたから」
今の私には、勇気を振り絞ってもこれくらいのことした伝えられないけど。
私の中に芽生えたこの感情は、きっと……初めての恋。
自覚してしまうと、所詮は〝偽物〟であることがとても切なくて、苦しいけれど。
「パーティーの日は、これを着て精一杯、婚約者らしく振舞いますね」
力強く宣言すると、礼央さんもそれに応えるように、ゆっくり頷いてくれた。
「うん、よろしく。俺の可愛い婚約者さん」
その日までのあとわずかな数日間は……。
こうしてそばにいられる喜びに。まるで本物の婚約者のように扱ってもらえる甘い幸せに。
難しいことは何も考えず、ただ溺れていたい――。