エリート外科医といいなり婚前同居
ふたりの会話にピクリと耳が反応し、つい足が止まった。
暁さまとお約束……彼の家政婦……って。もしかして、この人私に用があるの?
振り返ってみるとちょうど受付の女性と目が合い、その女性が「あっ」という顔をしたので、美人女性もつられて私の方を振り返る。私はなんとなく萎縮して、身を固くした。
「もしかして、あなたが暁先生の家政婦……?」
「そ、そうですけど……」
怯えながら頷くと、女性は大人の余裕を感じさせる笑みで言った。
「よかったわ会えて。私、彼の同僚で中村由貴って言います。今、時間平気?」
礼央さんの同僚って、もしかして美乃梨さんの言っていたお医者さん……?
だとしたら私に会いに来たのって、絶対に礼央さん関係の話だよね。
どうしよう。こんなに美人で立派なお仕事をしてる大人の女性に、太刀打ちできる気が全くしない。でも、ここで追い返すなんて勇気もないし……。
「はい……特に予定はないので」
「よかった。できれば、部屋に上げてほしいんだけど」
礼央さんの部屋に……? 無断でそんなことしていいわけないよね。礼央さんのいない間に、勝手に人を部屋に入れちゃうなんて。