エリート外科医といいなり婚前同居
「うそ、こんなのずっと取ってあったんだ……」
側面に十字マークのシールが貼られた、トランク型の可愛い救急箱。
サンタクロースに【おかあさんをください】なんて無理なお願いをした年のクリスマス、父が一生懸命知恵を振り絞って用意してくれた、思い出のプレゼントだ。
成長して使わなくなってからはどこにあるのかも知らなかったけれど、まさかずっと保管してくれていたとは知らなかった。
ダイニングテーブルで中を開けてみると、ピンクを基調とした女の子らしいデザインの体温計や注射器、血圧計、包帯にカプセルのお薬と、さまざまな道具ができた。
「改めて見ると、結構よくできてるなぁ」
感心しながらそれぞれのおもちゃを手に取っていると、同じく興味深そうにおもちゃを観察していた拓斗くんが不意に言った。
「聴診器がありませんね。普通、こういうセットには入っていそうなのに」
「聴診器……」
そう口にしながら、脳裏にある映像が一瞬流れる。