エリート外科医といいなり婚前同居

そこからなんとなくメールのやり取りが習慣になり、紺野先生は千波の成長ぶりを写真付きのメールで知らせてくれるようになる。

いつしかそれは俺の一番の楽しみになり、あの子がこんなに大きくなったのかと感慨深くなるのと同時に、また会いたいと漠然と思うようになった。

最初は恋愛感情ではなかった。でも、いざ日本に帰れると決まった時の胸の高揚は、明らかに〝また千波に会える〟と期待していたせいだと思う。

そんな俺の気持ちを紺野先生もなんとなく察していて、千波を家政婦として俺の家に住まわせるという思いつきは彼がしたものだった。

俺は本当に家事が苦手だし、再会した千波と距離を縮めるためにもなかなかいい考えかもしれないと、密かに胸を高鳴らせていたのだが……。

『ごめん、家政婦の件は千波に断られた。その代わり、別のおばちゃん家政婦がきみの元へ行くと思う。いやだったら断ってくれていいから』

前日になってそんな嘘の連絡をよこした茶目っ気たっぷりの紺野先生のせいで、俺はすっかり意気消沈していた。

予告通りその家政婦らしき人物にインターホンを鳴らされても出る気にならず、仕事をしながら適当にあしらおうと思っていたんだ。

しかしあろうことか、俺の部屋に立っていたのはおばちゃん家政婦なんかじゃなく――。

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