エリート外科医といいなり婚前同居

「父は紺野博史! 私、その娘の千波です!」

振り向いてみれば、長年会いたいと思っていた彼女の姿がそこにあって。

今までも写真で成長ぶりは知っていたものの、大人の女性らしく変貌を遂げ、それでも瞳だけはあどけなさの残る彼女の実物を初めて目の当たりにして、俺の心臓は早鐘を打ち始めた。

これは保護者のような気持でも、兄のような気持でもない。俺は、目の前の女性に惹かれているんだ。

その時はまだ淡い予感のような想いだったが、今まで女性などあまり興味がなかったはずの俺が、初めて抱いた甘い感情だった。

千波との同居生活が始まると、彼女は思っていた以上に無防備で隙だらけで、俺の心を乱していった。

うれしい時には花が咲いたように笑い、かと思えば、ぼんやり憂いを帯びた横顔には煽情的な雰囲気を漂わせ。

千波は男性経験がないのを気にして自分を卑下したりするが、だったらどうしてそんなに男を煽る表情をするのかと、押し倒して何度問い詰めたくなったかわからない。


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