エリート外科医といいなり婚前同居
女性は無事に危険な状態を脱したが、ようやく帰れることになったのは十八時頃。
千波はもう待っていないだろうと意気消沈しながら帰路につく。車なのであっという間にマンションに着き、地下駐車場に車を停めてエンジンを切った。
するとちょうどその時、ポケットに入れていたスマホが音を立てて着信を知らせた。
「さすがにこのタイミングで病院からの呼び出しってことはないよな……」
そうひとりごちて画面を見た俺は、自分の目を疑った。……千波からの電話だ。
俺は迷わず通話をタップし、スマホを耳に当てる。
「もしもし千波? ごめん、昼間俺に会いに来てくれたって聞いたけど、今仕事から帰ってきたところなんだ。千波さえよければ、また日を改めて――」
『よかった、帰ってきたんですね……? あの、私今、マンションの近くにいて』
マンションの近くにいる……? 俺はスマホを耳にあてたまま車を降り、駐車場からマンションの外の地上に出て、辺りを見回す。
「今、外に出た。どの辺にいる?」
『マンションの前の、広場の、ベンチです……』
「わかった。今すぐ行くけど……千波、なんか声が……」