エリート外科医といいなり婚前同居
『ごめんね、拓斗くん。私……彼のところへ行く』
そして彼を振り切るようにして家を飛び出したのが、拓斗くんと会った最後。
それ以来初めて言葉を交わすとあって、ついぎこちない態度になってしまう。
しかし拓斗くんの方は気まずい雰囲気をものともせず、私の手元を見てため息をこぼす。
「あーあ、指輪まで着けられて、もう逃げられないじゃないですか。束縛彼氏さんから」
「れ、礼央さんは別に束縛彼氏なんかじゃ……!」
「……でもよかったです。千波さん、今日は幸せそうな顔してる」
「えっ?」
拓斗くんが不意に放った言葉が意外で、思わず彼の顔を見上げる。そこには初めて見る拓斗くんの穏やかで優しい笑みがあった。
そうか、前に会った時の私は、礼央さんの元を飛び出してきたばかりで、ぐちゃぐちゃな顔をしていたから……。
「もっともっと幸せにしてもらってくださいね。じゃなきゃ、弟が実家に姉を連れ戻すって、あの人にも言っておいてください」
相変わらず嫌みっぽい口調ながらも、それが彼の優しさなのだとわかって、胸が熱くなった。
ありがとう、拓斗くん……。今度こそ、あなたとはいい姉弟の関係になれるような気がする。