エリート外科医といいなり婚前同居
「わかった。私、目いっぱい幸せになるね。拓斗くんは立派なお医者様になれるように、頑張って」
「はい。紺野先生の大事な病院をつぶすわけにはいきませんから」
私たちは笑顔で頷き合うとダイニングに移動し、五人ではちょっと狭く感じるテーブルでささやかな宴の準備を始めた。
それが整って、ようやく乾杯となる直前のことだった。
「お父さん、千波さんを僕にください」
礼央さんがいきなりそう言って父に頭を下げ、部屋がしんと静まり返った。
こ、このシーンってドラマでしか見たことなかったけど、実際娘の立場でもすごく緊張するものなんだな……。
礼央さんと一緒に頭を下げつつ上目づかいで父を見ると、難しい顔で腕組みをしていて、口を一文字に引き結んでいる。
お、お父さん、早くなにか言ってよ……!
居たたまれない空気にそわそわしていると、ようやく父が口を開いて。
「ダメだ!」
ただひと言それだけ言うと、また黙り込んでしまった。