エリート外科医といいなり婚前同居
「明日は六時に起きたいんだけど、起こしてくれる? 部屋に入って構わないから」
「は、はい。六時ですね。了解です」
「俺、寝起き悪いから、優しく起こしてくれると助かる」
「はぁ……」
優しく起こすって……どうやるの。おたまでフライパン叩いたりしちゃダメなのはわかるけど……。
彼の要望に応える自信がなさ過ぎて、曖昧な返事しかできない。
「じゃ、そろそろ部屋行くから、よろしく」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ、千波さん」
甘い笑顔で言い残し、暁さんは部屋を出て行った。こんなふうに男性から「おやすみ」と言わたことがないから、ただの挨拶とわかっていても妙に照れくさかった。
男性に対して全く免疫のない私が、あんなイケメンかつ若干意地悪な男性といきなり一緒に暮らすって、仕事とはいえやっぱり無理があるんじゃないだろうか……。
中途半端だった食器洗いを再開しながら、思わずため息がこぼれてしまう。
でも、まだこの暮らしも始まったばかりだし、他に仕事のアテもないし……とりあえず、頑張るしかないよね。明日の朝は、彼を六時に起こすんだっけ。
「私も早くこれ終わらせて寝ようっと」
私は食器洗いの手を早めキッチンを片付け終わると、早々と自分の部屋に引っ込み、眠りにつくのだった。