エリート外科医といいなり婚前同居
無理やり自分を納得させつつ、小鍋で野菜スープを温め、昨日彼と一緒に買ったデニッシュブレッドをトースターで焼いた。
そしてスーツに着替えた暁さんがダイニングに来た頃を見計らい、料理を出して紅茶を淹れた。買い物の時に聞いたけれど、イギリスで長いこと暮らしていた彼は、コーヒーより紅茶派なのだそうだ。
朝はダージリンをストレートで。疲れていて糖分が欲しい時には、アッサムの茶葉でミルクティーを淹れてほしいと頼まれている。
味気ない食生活を送っていた間も紅茶だけは淹れる習慣があったそうで、食器棚には年代物の素敵なティーポットとカップのセットが揃っていた。
「いい香りですね。紅茶の香りって頭がスッキリする気がします」
彼のカップに紅茶を注ぎ、ソーサーとともに差し出しながら言った。
「あ、わかってくれる? 病院の同僚たちはコーヒー党ばかりだから、ひとりで紅茶を飲む俺はいつも子ども扱いされるんだ」
暁さんは苦笑し、紅茶のカップを口に運ぶ。
「それだけで子ども扱いなんて……きっと、美味しい紅茶を飲んだことがないんですね。まぁ、私は本当に子どもみたいな理由で、コーヒーが苦手ですけど」
話しながら彼の向かいの椅子を引き、腰を下ろした。