エリート外科医といいなり婚前同居

「子どもみたいな理由?」

「だって、苦いじゃないですかコーヒー。カフェにあるような、ホイップやチョコレートシロップがたっぷり乗ったやつだったら飲めるんですけど」

その点、紅茶ならストレートでも苦すぎることがないから、暁さんが紅茶派だと聞いて、ちょっとうれしかったんだよね。

そんなことを思いつつ、私も紅茶をいただこうとカップを手に取ると、向かいから彼のクスクス笑う声が聞こえた。

「暁さんも、私のこと子どもみたいって思ったんでしょう」

じろりと睨みつけると、彼は顔の前で手をひらひら振って否定した。

「いや、ごめん。ただ、可愛いなって思っただけ」

「……やっぱり子ども扱いじゃないですか」

口をとがらせぷいっと顔をそむける私に、暁さんはさりげなく甘いセリフを放った。

「拗ねるなよ。ま、千波さんは拗ねた顔も可愛いけど」

不覚にもドキッとしてしまい、そむけた顔を戻せなくなってしまった。

もう……! 頭では、彼のこういう言動にいちいち反応するもんかって思うのに、心の方が全然言うこと聞かない。

彼の言う「可愛い」なんて、きっと挨拶みたいなものなのに……。

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