エリート外科医といいなり婚前同居
「そういえば、今日大学は?」
「午後からです」
話題が逸れたことにホッとしつつ、そういえば今日は微生物学の講義だと思い出す。大学で一番親しくしている友人、雅子に会える日だ。
もし講義のあと時間があれば、家政婦の仕事のことや暁さんのこと、ちょっと相談してみようかな。
「あの、授業の後友達とお茶してくるとか、そういうのは自由ですよね? もちろん、お夕飯の準備には間に合うように帰りますから」
「ああ、構わないよ。そこまで俺に制限する権利はないし。休みの日も、家事さえきちんとしてくれれば、好きに過ごしてくれていい。……あ、でも」
そこで一旦言葉を止めた彼は、カップに残っていた紅茶を飲み干してから、私をまっすぐに見つめた。
「俺の個人的な感情としては……男とふたりきりで出かけられるのは、嫌かな」
「え……?」
別に男性と二人きりで出かける予定なんてないけど、暁さんが嫌だという理由が全く分からず呆然とする。
けれど、彼はそれ以上の説明をすることなく椅子から立ち上がると、 ソファの背に掛けてあったコートを羽織り、ビジネスバッグを持った。