エリート外科医といいなり婚前同居

「おもちゃの聴診器」

「……おもちゃ? お医者様だから、本物を持っているだけなんじゃなくて?」

「ううん、絶対にあれはおもちゃ! 安っぽいつくりで色もピンクだったもん! しかも、隠し場所はベッドの下だよ?」

私の必死の説明に、雅子の中でも暁さんの印象が変わったらしい。雅子もずいっと私の方へ身を寄せ、声をひそめて言った。

「ということは……いわゆるオトナ用の?」

「だと思う。今のところ、それを使うお相手の影はないけど……」

彼自身、恋人はいないと言っていたし。

「じゃあ、千波が危ないじゃない!」

「え?」

いったいなにが危ないの? キョトンとする私に、雅子が険しい顔で告げる。

「千波に優しかったり甘いこと言ったりするのは、いつか一緒にお医者さんごっこするためかもしれないってこと!」

暁さんが、私とお医者さんごっこ……?

その妖しげなフレーズに、いつかも頭に浮かんだ白衣姿の暁さんが、再び脳裏に現れた。

『千波さん。……診察するから、脱いで?』

甘いハスキーボイスに優しくうながされて、私はブラウスのボタンに手をかけ――。

……って、なによこの使い古されたAVの設定みたいな妄想!



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