エリート外科医といいなり婚前同居
頭では冷静にそう思えるのに、なんでだろう。いいようのない寂しさや疎外感が、私の胸を吹き抜ける。
実の娘は、子どもの頃にいくらおもちゃでお医者さんごっこをしたって、医者になれなかった落ちこぼれ。そんな私が家を出たタイミングで、父は白石さんや拓斗くんと新しい家庭を築こうとしている。
私のことは、知り合いの医者の所で住み込みの家政婦でもしてくれているのが、ちょうどいい距離感だとか思われていたりして……?
「千波?」
ぐるぐる考えていたら、心配そうな父に顔を覗き込まれる。
やだ、私ってば……変なこと考えるのはよそう。お父さんには幸せになってほしいって、この間自分で言ったじゃない。
ちゃんと、応援してあげなくちゃ。お父さんの将来と、新しい家族のこと。
「私は……いいと思うよ?」
複雑な気持ちは押し隠し、私はにっこり微笑んでみせた。拓斗くんはまだ不安げな顔をしていたけれど、父はホッとしたように息をついた。
「よかった……。千波なら、賛成してくれると思ってたよ」
その言葉を聞いて、やっぱり反対なんてしなくてよかったと、私の方こそ安堵していた。
今までずっと苦労してきた父を、とっくに成人した娘のことなんかで困らせたくはないもの。