エリート外科医といいなり婚前同居
「ごめんね、お客さんなのに手伝わせちゃって」
洗い物を始めた私の横で、拓斗くんは手持無沙汰そうに立っているので、なにか話しかけなきゃと彼に声をかける。
「いえ、気にしないでください。もしかしたら、僕たち姉弟になるかもですし」
「そっか……私、ずっと一人っ子だったのに、急におっきい弟ができちゃった」
私がおどけたように笑うと、拓斗くんは前を向いたまま、独り言のように言った。
「僕も……急にこんな可愛い姉ができて、戸惑います」
「え?」
今、可愛い姉って言った……?
思わず聞き返したけれど、拓斗くんはにこっと笑うだけ。その笑顔にはアイドルのような眩しさと、年下らしい可愛らしさがあって、一瞬ドキッとしてしまった。
大人っぽい魅力の漂う暁さんとはタイプが違うイケメンだけれど、拓斗くんもモテるんだろうなぁ……。
彼の隣に立っている状況を照れくさく思っていたら、拓斗くんが神妙な顔になって尋ねてきた。
「ところで、跡継ぎのこと……本当に、いいんですか? 僕で」
「うん? いいに決まってるじゃん。私は跡継げないし、むしろありがたいよ」