エリート外科医といいなり婚前同居
明るく答えつつ、内心ではまたしても複雑な気持ちが舞い戻っていた。
いつかは拓斗くんじゃなく、私の方が〝お客様〟としてこの家に上がることになるのかな……。そう思うと、なんともいえない切なさがこみ上げる。
拓斗くんはそんな私の心を見透かすかのようにジッと見つめてきて、居心地の悪くなった私はサッと洗い物を終えると、コートを羽織りバッグを手に持った。
「じゃあ、私は帰るね。拓斗くんも、お父さんのことは放って帰っていいからね」
「なら、途中まで送ります。ちょっと待っててください」
「えっ。いいよ、まだ昼間だし……」
「僕が千波さんと話したいんです」
やんわり断ろうとしたのに、拓斗くんにきっぱり言われてしまって、それ以上は拒めなかった。
この子……可愛い顔して結構強引だ。
呆気に取られているうちに、拓斗くんはリビングのテーブルに広げていた教科書類をリュックにしまい、それを背負って私の元へ来る。
「じゃあ行きましょっか」
「う、うん」