エリート外科医といいなり婚前同居
「すみません……お恥ずかしいところを、お見せして」
「ううん。落ち着いた?」
「はい。一応……」
ようやく泣き止んだ私は、暁さんとリビングのソファに並んで腰かけていた。
しかし、完全に元気になったとは到底言えない状態で、膝の上でこぶしを握り締めてただじっとうつむく。
早く、夕飯の支度やお風呂の準備をしなければならないのに……まったく腰を上げる気になれない。
しばらくそのままでいたら、不意にソファの革が擦れる音がして、少しスペースを開けて座っていた暁さんが、私に寄り添う。
そして、膝の上にある私の手を、自分の手でそっと包み込んだ。
顔を上げると、優しげな瞳と目が合って、問いかけられる。
「紺野先生となにかあった?」
答えようかどうか一瞬迷って、けれど、重なった手から伝わる彼の温もりに導かれるようにして、私は自然と口を開いていた。
「なにかあった、というほどの話じゃないんです。自分でも、どうしてこんなに落ち込んでいるのかわからないくらい……」
「それでも聞くよ。誰かに話せば、千波さんの胸のつかえが少しは取れるかもしれない」