エリート外科医といいなり婚前同居
「……もしかして、またひとりぼっちになるんじゃないかって思った?」
静かなハスキーボイスが、私にそう問いかけた。
「ひとり……ぼっち?」
どうしてそんな理由だと思うの? それに〝また〟ってどういう意味?
彼の前で泣くのは、今日が初めてなのに。
「話したくないならいい。でも……」
そこで言葉を切った暁さんは、立ち尽くす私の背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめた。
外を歩いて冷え切った体が、彼の温もりに包まれる。そして、耳元で触れそうな距離にある唇が、優しくささやいた。
「泣くなら、俺の胸で泣いて」
彼のその一言で、それまで意識して泣くのを堪えていたわけじゃないのに、ぶわっと瞳に涙があふれた。瞬きをしただけで、雫がぽろぽろと頬を伝う。
あれ? なんで……? なんで、暁さんのひと言でこんなに泣けちゃうの……?
自分で自分がわからず、けれど彼の広い胸に包まれているのは心地よくて、私は涙が止まるまでずっと彼の胸に顔を押し付けていた。
その間中、彼は私の丸いボブの髪を優しい手つきで撫でたり、時折〝大丈夫だよ〟と安心させるように、私の体をきつく抱きしめるのだった。