エリート外科医といいなり婚前同居

「見てみたいなぁ、その家政婦の子。幼稚園児がどうのって言ったけど、かなり年下なの?」

中村は興味津々に目を輝かせるが、なんだか千波のことを苛めそうな気がするから、あまり会わせたくはないな。

勝手な憶測で失礼なことを思いつつ、俺は記憶を頼りに答える。

「……九歳差、だったかな」

「わー、なら二十代前半? 今どきの子って奥手だから、まだ処女だったりして」

きゃー、と興奮する中村に、橋本も加勢する。

「いや、それどころか、キスも初めてだったんだって」

「すご~い、うぶなのねぇ。でも逆に言えば、暁先生、調教し放題じゃない」

「そうか……暁、お前そんな趣味が……」

話しの方向がどんどん変な方向に逸れていくので、うっとうしくなった俺はひとり立ち上がって、仮眠室の出入り口へ向かう。

そんな俺の背中に、ふざけるのを止めた中村の声が飛んでくる。

「ねえ、私まだ諦めてないから」

俺は足を止め、彼女の方を振り返った。

俺と彼女との間に流れるただならぬ空気に気が付いた橋本が、怪訝そうに二人の顔を見比べる。


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