エリート外科医といいなり婚前同居
「……あ、すこし、スッキリしました」
「本当に?」
「はい。あ、お肉、そろそろいいかもなので、出してきますね」
突拍子もなく肉の話を持ち出す千波は、やはり酔っているのだろう。
椅子から立ち上がる彼女をハラハラしながら見守っていると、やはり千波はよろけて転びそうになった。
自分でなんとか踏みとどまったものの、キッチンに向かう足取りはやはり危なっかしい。
「やー、可愛いけど、すげーヤキモキするな。隙ありすぎて」
同じく千波の様子を見守っていた橋本が呟いた言葉に、俺は深くうなずく。
「だろ? だから基本的にほかの男には会わせたくないんだよ。こういうのも、今日が最初で最後――」
そんな会話の途中、キッチンからバタン!と大きな音がして、俺と橋本は顔を見合わせる。
急いでキッチンに向かうと、ミトンを手に嵌めたままの千波が床に倒れていた。どくん、と心臓が重い音を立て、全身から血の気が引いていく。
「千波!」
俺はとっさに彼女の元へしゃがみ込んだが、よくよく顔を覗き込んでみると、安らかに目を閉じた彼女はすうすうと心地よさそうな寝息を立てていた。