エリート外科医といいなり婚前同居
とくとくと、千波のグラスに赤ワインが注がれる。
まぁ、人並みに飲めるなら、ワイン一杯くらいどうってことないだろう。俺はそう思って、グラスに口をつける千波を静かに見守っていたのだが……。
その一杯を飲み干すころには、明らかにいつもと違う彼女に変貌していた。
「礼央しゃん、もう一杯、飲んでもいいれすか……?」
トロンと半開きになった瞳で俺を見つめ、おぼつかない口調で甘えた声を出す千波。
人並みって、どこがだよ……。 飲めないどころか、こんな無防備な状態になるなんて……。
可愛すぎると内心悶えつつも、彼女に酒を飲ませてはいけなかったのだと今さら悟る。橋本もさすがに反省したらしく、俺に向かって申し訳なさそうに両手を合わせていた。
ヤツへの説教は改めてするとして、今は千波をなんとかしなくては。
「ダメに決まってるだろ。ほら、水飲んで」
キッチンでコップに水を汲んできた俺は、それを千波に手渡す。
両手で包み込むようにコップを持った千波はこくりと喉を鳴らして水を飲むと、ぷはぁと息をついた。その一連の動作も酔いのせいかゆっくりで、水に濡れた唇が妙に艶めかしい。
橋本という第三者がいなければ、確実に理性はぶっ飛んでいただろう。