大嫌い、だから恋人になる
「うん。自分でも信じられないけど、彼女のことが気になる。と言うより、好きになったかもしれない」

「冗談でしょう?」

春香さんは笑い出した。

「だってその子、別に可愛く無いし、料理も勉強もダメなんでしょ?何が良いの?そんなどこにでもいる普通の女の子、玲には相応しくないわ。そんな子と付き合ったら玲の格が落ちる。ちゃんと付き合う人は選ばないと。騙されてるだけよ、玲は。もう一回ちゃんと考えなさいよ。スタイルも顔も別に性格も良くない、これと言って特徴の無い子なんでしょ。グズで泣き虫で・・・」

春香さんはちひろの悪口をそれからずっと並べた。

でも春香さんは悪く無い。

俺だって少し前まで、春香さんと一緒にちひろの悪口を言ってたから。

むしろ俺の方が多く言ってた。

でも俺は春香さんがちひろの悪口を言ってるのを見て、急に春香さんに対する気持ちが冷めていく気がした。

俺は卑怯な人間で、自己中心な人間だ。

でも気持ちは戻らなかった。
< 205 / 319 >

この作品をシェア

pagetop