大嫌い、だから恋人になる
初めて握った秋山君の手は思ったよりも小さかった。

そして少し暖かかった。

秋山君は手を握るのは恥ずかしいなんて言ったけど、握ってる手は力強かった。

男の子の手なんだなって思った。

このままずっと握ってられたら、どんなに幸せなんだろうって思った。

この手を放すなんて考えたくなかった。

一分でも良いから長く握っていたかった。

でもゆっくり歩いてるつもりなのに家はあっという間に近付く。

夜の住宅街はしんとしていて、私達の足音とお喋りの声が響き渡る。

月明かりがとってもキレイで、まるで私達を照らす為に輝いてるみたいだった。

「この辺か?」

秋山君が聞いた。

「あの道を渡った所、ほら、角にある」

「そっか。また今度遊びに来るよ」

「そうだね」

「じゃあ、俺もう行くから。また明日な」

秋山君はそう言って私の手を離した。


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