大嫌い、だから恋人になる
出発の前の晩は、家族水入らずで過ごした。

母さんは暫く食べられないだろうからと、俺の好物をたくさん机に並べた。

親父はくどくどと、向こうに行っても、きちんと勉強する様にと言った。

「良いか。遊びに行かせるわけじゃ無いんだからな」

「わかってるよ。そう同じこと繰り返すのは止めてくれ」

「父さんは若い頃、留学なんてしたくても出来なかったんだ。だから父さんの分まで勉強してくれ。父さんも若い頃から、国際人として育ってたら、会社で外国の営業部門も任されて、もっと出世してたはずなんだ。お前には父さんと同じ悔しさを味わって欲しく無いんだ」

「わかってるよ」

春香さんだけじゃない、親父も俺を自分の理想に当て嵌めようとする。でも別に良い。俺には本当の自分なんて無いんだから。
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