大嫌い、だから恋人になる
「待って、待って」

と私は言った。

「まだ秋山君と別れてから、一週間も経って無いんだよ。気持ちの整理が全然付かないよ。未練たらたらだし、他の男子のことなんて考えられない」

「でも秋山君、オーストラリアに行っちゃったんでしょ」

「そうだけど、凜ちゃん。そんなにはっきり言わなくても」

「このまま高校生活三年間、戻って来ない男の子のこと考えるなんてつまんないよ」

なっちゃんもプッシュしてくる。

何だって今日はこんなに二人とも、積極的なんだろう。

「まあ、そんなに言うなら、逢うだけなら良いかも。でも私の知ってる人?」

「知ってる人」

「じゃあ、クラスメイト?それとも中学校の時の男子とか?」

「それは秘密。でも悪く無いと思うよ。ちーちゃん、一度で良いから逢ってみて」

「別に良いけど。でも何で急にこんな話になったの?今までそんな話、無かったのに」

「今日、逢いたいって言われたから、ちひろに」

「今日?随分と急だね。って言うか私、心の準備も出来てないし、誰かもわからない男子と逢うの嫌だよ」

「大丈夫、ちーちゃんも知ってる男の子だから」


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