大嫌い、だから恋人になる
別に良いけどね、私だって秋山君のこと大嫌いだし。

試合は結局、私たちの負けで終わり。

私がコートから出た時には、もう秋山君は自分の試合に戻ってた。

別に秋山君に嫌われたって、何でもない。むしろ精々する。秋山君なんてあの人と同じだもん。

「ちひろ、泣いてるの?」

凜ちゃんに言われてびっくりした。

本当だ。涙が流れてる。何でだろう。私は秋山君が嫌いで、秋山君も私が嫌い、それだけなのに。

この涙は秋山君とは全然関係無い。

バスケで疲れただけなんだ。

「試合中、どっか怪我でもしたの?」

「大丈夫、凜ちゃん。汗が目に入って。それよりなっちゃんの試合、応援しよ」

「そう、それなら良いけど」

少しした後、私は聞いてみた。

「ねぇ、秋山君って性格どうなのかな?悪いと思う?」

「何言ってるの?秋山君、誰にでも優しいよ」

「ウソ、凜ちゃん秋山君と話すことあるの?」

「別にそう言うわけじゃないけど、重い物持ってたら、手伝ってくれたり、さっきみたいに誰が失敗したりすると、励ましてくれたり、私も前に忘れ物して困ってたら助けてくれたよ。イケメンで運動神経良くて性格良いなんてズルいよね」

「でも秋山君のこと嫌いな人も居るでしょ」

「どうかな。秋山君のことそんな風に思ってる人は居ないと思うけど。私は聞いたことないな」

そんなわけない。みんな騙されてるんだ。私は絶対に騙されないから。
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