強すぎる彼女と優しすぎる彼
「今は会社を大きくすることじゃなくていかに自分の納得できる企画を実現できるかが大切なんだ。十分生活はできるし。」
「いいな。そうやって夢つかんだんだな。お前は。」
「まだ途中だよ。これから子供も生まれるし、まだまだ。」
司はコーヒーを飲んだ。
そして
「お前は?」
と龍仁を見る。
「実はもうこっちに戻ってくるつもりないんだ。北海道で根っこはやして、家も建てようと思ってる。佳子とも話して子供を育てる環境に北海道を選ぼうって。」
「仕事は?」
「北海道の支社で部長職やって、本当は本社の部長として戻る予定だったんだけど、俺は出世するよりある程度の地位さえあればそれでいいって思うんだ。これ以上うえに行ったら現場からどんどん離れるだろ?」
「そうだな」
「本社に戻る話は断って北海道の支社でやっていく。今の職場環境も、チームの雰囲気もいいんだ。呼吸が合ってる。」
「そっか。それでもこの業界でお前の名前を耳にすること多いぞ?」
「そうか?」
龍仁は昔から営業職が向いていてかなり顔が広い。
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