My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

 蝋燭の明かりに揺らめくその瞳はとても思いつめた色をしていて。
 私はなんとなく横にいるラグを見上げる。
 その視線に気づくとラグは小さく息を吐いて目を伏せた。
「勝手にしろ」とでも言いたげだ。彼も、その乗り物が気になるのかもしれない。
 私は一度ゴクリと喉を鳴らしてから、口を開く。

「ライゼちゃんの期待に答えられるか、正直自信はないけど……私は、行きたい」

 途端、ライゼちゃんの顔がぱーっと明るくなった。
 それは歳相応な笑顔だ。

「ありがとうございます!」
「やったね、姉ちゃん!」

 ラウト君もはしゃいだように声を上げた。
 こんなに喜んでもらえて、私もなんだか顔が緩んでしまった。
 だが予想通り、横からは盛大な溜息。

「セリーン。フェルクレールトに行ったことは?」
「あ? あぁ、あるが……」

 唐突に声を掛けられセリーンが驚いたように答える。

「ってことはあの野郎がいる可能性もある、か」

 小さく呟くラグ。

(あ、そうか。セリーンが行ったことのある国に、エルネストさんがいるかもしれないんだ)

 ということはラグも承諾してくれたということだ……!
 私は内心ホっと胸を撫で下ろす。
 ちょっとだけ、「ならお前ひとりで行け」と言われるのではと思ったのだ。

「ありがとう」

 緩んだ顔のまま私が言うと、ラグはびっくりしたようにその瞳を大きく広げた。
 なんでお礼を言われたのか、わからなかったみたいだ。
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