My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
でも流石にすぐには誰も口を開いてくれなかった。
皆恥ずかしそうに顔を見合わせてしまっている。
だがそのときだ。
「ドーレーミーファーソーラーシードー!」
そんな元気な声が子供たちの後ろから聞こえてきた。
皆の視線がそちらに集まる。
――ラウト君だ!
「うん! ラウト君上手上手!」
拍手しながら言うとラウト君は嬉しそうに顔を赤くした。すると。
「ドーレーミー……」
「ドーレーミー!」
子供達の中からほぼ同じタイミングで声が上がった。
ラウト君と同じ年頃の女の子と男の子だ。
その二人はお互い驚いたように顔を見合わせてから、はにかむようにして笑った。
(笑ってくれた!)
そのことが嬉しくて、私はもう一度『ド』から歌い始める。
それにラウト君と、先ほどの二人の声が加わる。
更には私の後ろからも。
振り向くとライゼちゃんが頬をほんのり赤く染めにっこりと微笑んだ。その笑顔は弟のラウト君にそっくりだった。
三度目に入るころには、殆どの子供達が一緒に歌ってくれていた。
(楽しい……!)
こんなに楽しいのは久しぶりだった。
私は一旦歌うのを止め、大きく深呼吸する。
そんな私を不思議そうに見つめる子供たち。
そして、私は今までで一番大きな声で歌い始めた。