My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「ブライトの家系は代々医術に長けているのです。そして代々私たち神導術士を護ってくれています。しかし彼らの両親は戦火に巻き込まれ帰らぬ人となってしまい、フォルゲンもいない今、ブライトは一人で私を護ってくれています。……彼はとてもフォルゲンを尊敬していたので、おそらく一番辛いのはブライトです」
「そう……だったんだ」
私は顔も知らないフォルゲンさんを想いながら、家族をバラバラにしてしまう戦争の悲惨さに改めて強い怒りと悲しみを覚えた。
「フォルゲンさんも他の人達も、早く帰ってくるといいね」
「はい」
気休めにもならない私の言葉に、ライゼちゃんはキレイな微笑みを返してくれた。
「で、どうすんだ?」
そんなしんみりとした雰囲気を破ったのはラグのイラついた声だった。
「今から村に戻るのか? それとも夜が明けてからにすんのか? オレはとりあえず寝たいんだがな」
そのあまりに不躾な物言いに思わずムッとしてラグを見るが、ライゼちゃんが焦ったように謝る方が早かった。
「申し訳ありません、今は関係の無い話でしたね。皆さんがお疲れだったことをすっかり忘れていました。……私はブライトが戻るのを待とうと思います。村の状況を聞いてブライトを交えてまたお話いたしましょう。今は皆さん身体を休めてください」
そう言われたら思い出したように急な眠気がやってきた。
見ると、ラウト君も立ちながらうつらうつらしている。彼も相当疲れているはずだ。
同じように疲れているはずのブライト君には申し訳ないと思いながらも、結局、私たちはライゼちゃんに言われるまま仮眠をとることにした。
寝室で横になると、セリーンにお休みを言う間もなく飲み込まれるようにして意識が遠のいていった。