My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
 威勢良く現れた男たちだったが、私を目にした途端、他の人々と同じように明らかに動揺した素振りを見せた。
 しかしそれは一瞬だけ。二人は目配せし合うと、私の目の前まで近寄ってきた。
 男たち、優に180cmはあるだろう。ちなみに私の身長は女子の平均並。
 威圧感に思わず一歩引いてしまった。

「娘、どこから来た」
「え?」
「どこから来たと訊いている!」

 その怒鳴り声に私は身をすくませる。

「に、日本から……?」

 県名から言うべきか瞬間迷いつつも私は小さく答えた。
 だが案の定、私の答えは気に入られなかったらしい。男は眉をぴくりと上げ、更に大きな声を出した。

「ニホン!? そんな名は聞いたこともない」
「じゃあ、ジャパンは?」
「知らんな」
「アメリカは!?」
「…………」

 無言で顔をしかめる兵士たちに、足元がスーっと冷たくなっていくのを感じた。

(嘘でしょ……?)

 此処が日本でないことはほぼ間違いないようだ。
 こんな格好の人が日本で平然と歩いていられるとしたら、それこそ遊園地や映画村くらいなものだ。
 一般人の私ごときにこんな手の込んだドッキリもないだろう。

 ……頭を掠めるまさかの嫌な予感。

 今時日本もアメリカも知らない国などあるだろうか。小さな村ならまだしも、一見十分に栄えていそうな大きな街だ。

 ひょっとしたら此処は――。
< 3 / 280 >

この作品をシェア

pagetop