My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

 兵士ではない。しかし皆手には何かしら武器になるものを持っている。

「何で! 兵士じゃないよ!?」
「ちっ、自警団も加わりやがったのか! カノン走るぞ!!」

 私は震えそうになる足を叱咤して地面を蹴った。

(自警団? 敵は兵士だけじゃないってこと……!?)

 背後から追って来るバタバタという足音。あの金属音ほどではないがその数の多さは十分に恐怖だ。
 必死に走りながら思い出す。
 初めてこの世界に来た日も兵士達にこうして追い掛けられた。
 あの時のラグは子供の姿だったけれど、今のラグなら……!

「ラグ! 魔導術は!?」
「それは最終手段だ! 今術を使っちまうと兵士達に出くわしたときに使えなくなっちまう! なんとか撒くんだ!」

 ラグの酷くイラついた声が返ってくる。
 そうだ。最悪な敵はやはり兵士達。
 この迷路のように狭く入り組んだ路地ならどこかにまた隠れられる場所があるかもしれない。
 私は走りながらきょろきょろと視線を巡らせた。
 ――それがいけなかった。
 ラグの背中だけを追っていれば良かったのだ。
 気付いたときには、彼の姿は無かった。

「うそ!?」

 思わず足を止めて振り返る。やはりラグはどこにもいない。
 いつの間にはぐれてしまったのだろう。
 だが戻ってラグを探している時間はない。
 まだ姿は見えないが確実にこちらに近づいてくる複数の足音。
 私は荒い息をどうにか整えまた走り出した。

(どうしようどうしようどうしよう……!!)

 急に一人になってしまった私は、完全にパニック状態に陥っていた。
 この世界に来てからいつも助けてくれる誰かが近くにいた。
 それが、こんな最悪な状況でひとりぼっちになってしまった……!
< 98 / 280 >

この作品をシェア

pagetop