偽婚


甘味処で宇治抹茶ケーキを食べたあと、私たちは寺社仏閣をめぐった。

どこに行っても神藤さんは商売繁盛を祈願して、私はそれに笑ってしまった。


私と神藤さんは、人混みを抜けても、ずっと繋いだ手を離さなかった。



夕方になり、旅館に着いた。



「まぁ、美男美女のご夫婦ですこと。ごゆっくり」


仲居さんに案内されたのは、広い和室。

窓から見える中庭は、日本庭園みたいになっている。



「わー、久しぶりの畳だぁ」

「俺はホテルの方が好きだけどな」


相変わらずの余計な一言は、聞き流しておくことにする。



「飯までまだ時間あるな。どうする?」

「私、大浴場に行ってみたい」

「あぁ、そうしろよ。俺はその間に、ちょっと仕事してるから」


また仕事かとは思ったが、でもあまり邪魔することもできない。

私は、今度は素直に、タオルと浴衣を手に、神藤さんを残して部屋を出た。

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