加納欄の受難 シリーズ1 シーズン1
 あたしは、無我夢中で川に入り、高遠先輩の名前をひたすら呼び、なんとか岸に運んだ。

「高遠先輩っ!高遠先輩っ!目をあけてっ!」

 顔は青ざめて目は閉じたままだった。

 心臓の音を聞き、息があるか確かめる。

 脈も探るがあまり感じるようには伝わらなかった。

「高遠先輩しっかりして下さい!」

 先程の老人が何か言ってるけど、あたしの耳には届かなかった。

 あたしは、高遠先輩の胸に両手をおき、おもいっきり5回押した。

「高遠先輩っ!高遠先輩っ!目を開けてっ!」

 そう言い続けながら。

 更に5回押してみる。

 高遠先輩の反応はなかった。

 あたしは、高遠先輩の頭に回り込んで、顎を持ち上げ頭を下げ起動確保をし人工呼吸をした。



目を開けて!



息をしてっ!



 それだけを考えながら何回もした。

「欄ちゃん!大丈夫か!?」

 遅れてやってきたのは苫利先輩達だった。

 あたしは、人工呼吸からまた心臓マッサージに変えようとしていたところだった。

 声が聞こえて苫利先輩達を確認して、大声で叫んでいた。

「高遠先輩が死んじゃう!息してない!何やっても動かない!」

 苫利先輩が心臓マッサージを変わってくれた。

 そのほんの数秒後、救急隊が来て、高遠先輩をタンカーに乗せ吉井さんを同乗させて、救急車を猛ダッシュさせた。

 あたしは、その場にへたりこんだ。

 高遠先輩の青ざめた顔が頭から離れなかった。

「欄ちゃん。立てるか?」

 苫利先輩が手を差しのべてくれた。

 あまりの出来事に、すぐには頭が回らなかった。

 それでもやっとの思いで立ち上がり、苫利先輩に連れられて、覆面者までたどり着くと助手席に倒れこんだ。

 運転は苫利先輩がしてくれた。

「大丈夫だって。救急車で運ばれたんだから。その前には欄ちゃんが応急措置してただろ」

 いつもの明るい声での説得ではなかった。

「発見した時には、あまり息してなかったんです。脈もわかんなくて・・・」

「大丈夫だって。ほら、高遠先輩、死神ついてるから、な?」



だから、ダメじゃん(>_<)



「そうですね・・・」

 何の根拠もない、返事をした。

 神に祈るしかなかった。



あと、あたしに出来ることは・・・?


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