私の中におっさん(魔王)がいる。

 * * *


「……」

 歯軋りが縁側に響いた。

「――毛利! あンのヤロウ!」

 怒りに燃えた、黒田が吠えた。

「バカにしやがって! あの能面野郎!」

 悪態づいて、黒田は――ガンッ!と、地団太を踏むように床を蹴りつける。

「はいはい、では我々は先に行きますよ」

 風間は呆れ混じりに水色の呪符を取り出した。

「はあ!?」
 
 食って掛かりそうになった黒田だったが、怒りをぐっと押し止めた。
 ポケットから水色の呪符を取り出す。

「行きますよ、雪村様」
「え? どこに?」
「いいから、ついていらして下さい」

 風間は呆れて言ったが、その嘆きが終わらないうちに、黒田が姿を消した。

「あっ、先を越されたじゃないですか!」
「え、俺のせい?」

 雪村をなじる声と、小さな驚きを残して、中央から人の気配は消えた。

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