私の中におっさん(魔王)がいる。
「でぇ、肝心な魔王の話なんだけどさぁ。どうする?」

 飄々と黒田が話を続けたので、場の空気は和らいだ。

「魔王は彼女の中に入っちゃってるわけだろ。死体だったらぼくらが戦って、勝ったやつがその死体プラス魔王を手に入れるって話がついてたわけだけど、彼女生きてるもんねぇ……どうする?」
「ったってなぁ……」

 花野井は、困ったようすで頭を描く。

「いっそ殺しちゃう? その方が手っ取り早いでしょ」

 こともなげに言ってのける黒田に、雪村が勢い良く反論した。

「そんなのダメだ! 絶対ダメだ! そんなの、可哀想だろ!」
「俺もその提案には乗れねぇな」

 花野井は軽く殺気を発したが、黒田はふっと薄く笑った。

「まあ、アンタ達が反対しようがぼくはどうでも良いけどね」

 したいようにするからさ――と続く言葉を飲み込み、どいつもこいつも甘いんだよと、芽生えている怒りを隠した。そこに、

「当然、方法はあるんだろう。風間」

 突然、確信的な声音がふってきた。言ったのは毛利で、話題をふられた風間は、にっこりとしていた笑みを解いた。真剣な眼差しで、一同を見やる。

「彼女のことは不可抗力ではありましたが、たしかに毛利様のおっしゃるように、我々のうち誰かが魔王を手に出来る可能性はあります」
「どうやって?」

 怪訝に花野井が眉を顰める。

「彼女を、恋に落とすのです」
「はあ!?」

 あからさまに驚いたのは黒田だ。
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