私の中におっさん(魔王)がいる。

 私は乱れた髪を直しながら、びっくりしていた。頭を撫でられたことにも驚いたけど、花野井さんの表情も意外だった。
 なんだかすごく心配してくれて、やっと見つけてすごく安心したみたいな。そんな笑みだった。

(やっぱり、良い人なんだ)

 アニキって呼びたい。私、一人っ子だからずっとお兄ちゃん欲しかったんだよね。花野井さんはお兄ちゃんっていうより、アニキって感じの方が似合う。
 そんなことを考えつつ、私はちらりと横たわるドラゴンらしき生物に目を向けた。

「あの……あの生物ってなんなんですか? ここって、日本ですよね?」

 クロちゃんと花野井さんはぽかんとした表情で顔を見合わせた。毛利さんはあいからず、能面みたいな表情だから何考えたのかはわからない。けど、なんだか嫌な予感がする。

「日本ってなんだ? それが嬢ちゃんの世界か?」
「だから、それやめてくださいってば。日本語話してるくせに、日本がわからないとかありえないじゃないですか。もう、そういう宗教の話はなしとして答えて欲しいんです」

 ちょっと強気に言ってみると、ふっとクロちゃんと花野井さんは笑った。

「やぁっぱ、そういう風にみてたか!」
「言っとくけど、ぼく無宗教だから。神様なんか微塵も信じてないよ」
「え……」

 じゃあ、どういう?

「とりあえず、さっきの質問に答えた方が良いかな?」
「え?」
「あの生物がなんなのか、だよ」

 クロちゃんは横たわる生物を指差した。
 私は複雑な気持ちで頷く。

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