私の中におっさん(魔王)がいる。
「あの、この世界の名前はなんて言うんですか?」
「……世界に名などあるのか?」

 気軽に聞いたら、毛利さんに怪訝に返されてしまった。(もちろん毛利さんは無表情だったけど、そんな感じがしたのよね)
 たしかに、私も自分の世界の名前聞かれても答えられないもんな。日本ですって国名答えちゃうと思うもん。

 本当に違う世界に来ちゃったんだなぁ……。瞑とか、永とか、倭和国とか、全然知らない国名ばっかり。だけど、意外だな。オーストラリアとか、アメリカとかカタカナの国名はないんだ。
(ん? カタカナ?)
 ちょっと待って。私、なんで文字読めてるの? 言葉だって通じてるし……変じゃない?

「あの、私、本当に違う世界からやってきたんでしょうか?」
「何故ですか?」

 風間さんが怪訝に訊きかえす。

「私、文字が読めるんです。それに言葉だって通じてるし」

 国が違えば言葉だって当然違う。違う世界ならなおのことだ。
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