私の中におっさん(魔王)がいる。
「それは、おそらく魔王のせいかと思われます」
「魔王?」
「白い空間で会ったという鎧姿の男性が、貴女とぶつかり消えたんですよね?」
「はい」
「おそらくその男性を魔王が吸収し、男性の知識を魔王を取り込んだ貴女が無意識に使っているのでしょう」
その言葉を聞いて、私の脳裏にさっきのことが浮かんだ。門の前で聞こえた低い男の人の声。気のせいだと思ったけどあれが、あの人の……魔王の声なんだ。
なんか、気味が悪い。
自分の中に得体の知れないものがあると思うと、無性に気持ちが悪かった。
しかも、鎧のおじさんを吸収したというってことは、私の中にあの人がいるってことだ。
あの、死体のおじさんが……。
「うっ!」
急にめまいが襲ってきて、私は咄嗟に畳に両手をつく。
「大丈夫ですか!?」
「……大丈夫です」
声を上げた風間さんに私は短く返した。
顔を上げると、すぐそばに心配そうな顔つきの雪村くんとアニキの顔があった。
「一気に色んなことがあって、疲れたんだろ」
優しい声音で言って、アニキは肩に手を回し、そのまま私を抱き上げた。大きなてのひらにちょっとだけどきどきする。
「もう寝ろ。あとで飯持って行く」
アニキは少しぶっきらぼうに言って、優しい眼差しを向けてくれた。
本当にお兄ちゃんみたいな人だなぁ……。
「ありが――」
お礼を言おうとしたとき――ぐぎゅるるる。私のお腹の虫が、これでもかと高らかに鳴った。
(うわああ! なんで鳴っちゃうの! 恥ずかしい!)
熱い頬を両手で覆う。
「ハッハッハッハ! 飯が先だな!」
「……お願いします」
「おう!」
快活に返事をしたアニキは、廊下をダッカダッカと豪快に歩いた。私もそのリズムに合わせて微振動する。
私はアニキを見上げた。豪快で、がさつで、見た感じ少し怖いけど、でも、アニキがいてくれて本当によかった。なんだかこの人がいると、すごく安心する。
密かにほっと息をついて、ふと足先を見ると、雪村くんが隣を歩いていた。
心配そうな顔つきで、私を見てる。心配してついてきてくれたんだ。
「ありがとう」
私がお礼を言うと、雪村くんは意外そうに驚いて、次の瞬間何故か泣き出しそうになった。
「いや、俺達の方こそ、ごめんな」
そう一言告げて、俯いてしまった。
聞けば私がこの世界へ来たのは事故のようなものだったらしいし、責任を感じているのかも知れない。
「気にしないで」
私が笑うと、雪村くんは顔を上げて申し訳なさそうに眉尻を下げた。
そんなに、気にしなくて良いのに。故意じゃないんだから。
「魔王?」
「白い空間で会ったという鎧姿の男性が、貴女とぶつかり消えたんですよね?」
「はい」
「おそらくその男性を魔王が吸収し、男性の知識を魔王を取り込んだ貴女が無意識に使っているのでしょう」
その言葉を聞いて、私の脳裏にさっきのことが浮かんだ。門の前で聞こえた低い男の人の声。気のせいだと思ったけどあれが、あの人の……魔王の声なんだ。
なんか、気味が悪い。
自分の中に得体の知れないものがあると思うと、無性に気持ちが悪かった。
しかも、鎧のおじさんを吸収したというってことは、私の中にあの人がいるってことだ。
あの、死体のおじさんが……。
「うっ!」
急にめまいが襲ってきて、私は咄嗟に畳に両手をつく。
「大丈夫ですか!?」
「……大丈夫です」
声を上げた風間さんに私は短く返した。
顔を上げると、すぐそばに心配そうな顔つきの雪村くんとアニキの顔があった。
「一気に色んなことがあって、疲れたんだろ」
優しい声音で言って、アニキは肩に手を回し、そのまま私を抱き上げた。大きなてのひらにちょっとだけどきどきする。
「もう寝ろ。あとで飯持って行く」
アニキは少しぶっきらぼうに言って、優しい眼差しを向けてくれた。
本当にお兄ちゃんみたいな人だなぁ……。
「ありが――」
お礼を言おうとしたとき――ぐぎゅるるる。私のお腹の虫が、これでもかと高らかに鳴った。
(うわああ! なんで鳴っちゃうの! 恥ずかしい!)
熱い頬を両手で覆う。
「ハッハッハッハ! 飯が先だな!」
「……お願いします」
「おう!」
快活に返事をしたアニキは、廊下をダッカダッカと豪快に歩いた。私もそのリズムに合わせて微振動する。
私はアニキを見上げた。豪快で、がさつで、見た感じ少し怖いけど、でも、アニキがいてくれて本当によかった。なんだかこの人がいると、すごく安心する。
密かにほっと息をついて、ふと足先を見ると、雪村くんが隣を歩いていた。
心配そうな顔つきで、私を見てる。心配してついてきてくれたんだ。
「ありがとう」
私がお礼を言うと、雪村くんは意外そうに驚いて、次の瞬間何故か泣き出しそうになった。
「いや、俺達の方こそ、ごめんな」
そう一言告げて、俯いてしまった。
聞けば私がこの世界へ来たのは事故のようなものだったらしいし、責任を感じているのかも知れない。
「気にしないで」
私が笑うと、雪村くんは顔を上げて申し訳なさそうに眉尻を下げた。
そんなに、気にしなくて良いのに。故意じゃないんだから。