私の中におっさん(魔王)がいる。
* * *
騎乗翼竜(ラングル・ドラゴン)の収容小屋には、翼竜が一つ一つ区切られたところに翼を畳んで入っていて、手前に餌を入れるのか、水を入れるのかは解らないけど、一列の石でできた受け皿があった。
見たところ牛舎のような感じだ。
騎乗翼竜は、想像していたよりも小さかった。
馬の大きさと同じくらいで、首が細くて、うねっている。 そして名の通り、翼が生えている。
騎乗翼竜は見たところみんな首が長かった。一メートルくらいありそう。
「へえ……」
感動ながらも、少しだけ怖い。
ドラゴンなんて、ゴンゴドーラ以来見てないし、他の種類も見たことなかったから。
「触ってみるか?」
「え!?」
アニキはおかしそうに笑った。
「大丈夫だ。こいつらは人懐こいから」
「そ、そうなんですか……?」
「ああ。ラングルは、元々気性が穏やかで有名だが、騎乗翼竜になるやつは大抵野生じゃない。そう育てられてるから人に危害を加えるやつは少ない」
「……少ない、ですか――それでも、危害を加える可能性はあるんですね」
「そりゃそうだ。愛玩してるペットだって主人に噛み付いたり、命令を無視することだってあるだろ。絶対じゃないってことだ。生き物だからな」
そりゃ、そうか。
「……じゃあ、触ってみようかな」
「ああ。んじゃ、俺の騎乗翼竜にするか。その方が安心だろ?」
「はい」
収容小屋の端から移動していると、大抵は灰色か白が多い中、赤い騎乗翼竜の姿が目に留まった。
赤々しいというよりは、暗めの赤色。でも、何故か鮮やかな印象を持たせた。それは毛色というよりは、翠色の瞳によるものだったのかも知れない。
その瞳は、どこか気高い感じがした。
「アニ、花野井さん。この騎乗翼竜って――?」
「黒田のだ」
(ああ~! クロちゃんの)
なんだか妙に納得してしまう。
クロちゃんとこの騎乗翼竜はなんだかすごくぴったりな気がする。このドラゴンに跨ったクロちゃんはとてもさまになるだろうな。
「そいつには触れねぇからな」
「え?」