Fall -誘拐-
“果てしない~♪”と歌い出そうと、
“は”を発した瞬間、
噂をすればなんとやら現象が発生した。
「おーい黒部さん!久し振り~!」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「良かったもう来てくれないかと・・
・・・・・・??」
「・・・・・・・・・・。」
会えたことの嬉しさでテンションが上がりまくって・・
気付くのが遅れてしまった。
黒部さんの足取りが、もはや貞子すら超越したユラユラ俯きだった事を・・。
「え・・・ど、どうした・・?」
「・・・・・・スッ・・スッ・・・・
・・・・・・うわぁぁああん!!」
「※△■■◇×!?」
甘酸っぱくもなく、
青くもない学生生活を送ってはいたものの、
全然モテなかったわけじゃない。
恋人の1人や2人、僕にもちゃんといた。
だけど・・僕が通っていた高校・・
いや、神奈川県内の学校が全員束になったとしても、
瞬殺されるだろう美女が、急に号泣してこの胸に飛び込んできた事で・・
軽くパニックに陥った思考回路が何語でも無い声を発する。
「◎◇■☆・・どどどどうした?」
「・・・スッ・・・スッ・・・。」
ようやく母国言語を取り戻した後も、
黒部さんの瞳からずっと溢れていた。