Fall -誘拐-


「わたしは今日まで生きてみました♪

そして今♪ わたしは思っています~♪

明日からも♪
こうして生きて行くだろうと~♪」


道を作ったはいいものの、

“センス”とかそういう生まれ持ったものはやっぱり平凡だった。


自称ミュージシャンとも名乗れない、

たまに空き缶に入る10円玉や100円玉に歓びを感じて、

バイトでなんとか生計を立てる日々が続いているけど、


それでも平凡な大学を出て、

平凡なサラリーマンになっていたレールと考えるよりは何百倍も楽しかった。



ただやはり“ドラマチック”か“平凡”の境界線を引かれると・・僕は平凡な男だ。


この前出会った黒部リカさん。


今日も不自然にキョロキョロしながら拓郎を歌い終わるけど、

どうやら今日も・・。


あの日以来、彼女が現れる事は無かった。


まぁそりゃそうか・・何を期待してるんだ、と自分を納得させて、

今日も〆は千春 松山を歌っ・・・


「・・・・・・・・・・・あ・・。」


< 124 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop