Fall -誘拐-
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「ヤッちゃんお疲れ~!」
「ありがと~!」
「・・あっ!500円玉入ってるじゃん!!」
「それ!たまたま拓郎ファンのおじさんが通りかかって入れてくれたんだ。」
「良かったね~!
・・・・・もう終わっちゃった?」
「リカが来るまで待ってたよ。
じゃあ聴いてください。
最後の一曲・・松山千春。」
どっちかから約束をしたわけじゃない。
でもリカはお母さんの看病に行った帰り、
いつも寄ってくれた。
どっちかから言い出したわけじゃない。
でも大変な事、辛い気持ちなら尚更、
千春を歌い終わった後、
リカは正直に吐露してくれた。
どっちかが申し込んだわけじゃない。
でもギターを片付けた後、
あの日のように・・・
僕達は手を繋いで路地裏へと入っていった。
「お待たせ!チンジャオロース定食 ご飯大盛りです。」
「ヤッちゃんにも分けてあげるよ!」
「・・そう思って二人前作ったつもりだったけど・・もしかしてこれじゃ少ない?」
平凡を嫌っていたはずだったのに、
いつの間にか・・・僕はこれ以上無い“幸せな平凡”を手に入れていた。