Fall -誘拐-


ママさんに怒られながらも、
手を洗って厨房に入る。


僕が女性を連れてきた事がビックリ仰天だったのか、

親父さんも煙草をくわえながら、終始ニヤニヤ顔で僕と黒部さんを交互に見ていた。




そのままチャチャっと・・親父さん直伝のスパイスも追加した中華鍋を振い・・

まだ事態が飲み込めていない黒部さんの元へお盆を運んだ。


「あの・・・。」


「嫌な事とか、辛い事があっても、
お腹だけはちゃんと満たさなきゃダメだよ。

はい、チンジャオロース定食。」


「・・・・・・・・・・・・。」


「大丈夫。こんな小汚い店だけど、
味は確かだから。」

「キタナイ トハ シツレイ ダゾ ヤスシ!」



突然目の前に出された定食に戸惑い気味だったけど、

やがて割り箸を取って、
お皿に手を伸ばしてくれた。




「・・・・・・美味しい・・。」


「・・ハハッこれなら喉通るでしょ?」


「・・・うん・・。」



ちょっと多めに盛り付けた白飯も、米粒一つ残さず綺麗に食べてくれた黒部さん。


食べ終わった頃には、

初めて会った時に見せた笑顔と共に“ご馳走様でした”と言ってくれた。





















 





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