Fall -誘拐-
リカと出会ったあの夏から1年。
平凡からの脱却を目指して走り続けていたはずの僕の心境に、大きな変化が訪れていた。
いつ言おう・・いつ打ち明けようと思っていたけど、
リカのお母さんがバチスタ手術を受ける日に心は決まった。
バイトもうわの空でママさんに怒られながらも、祈り続けた夕暮れ。
これ以上無い号泣をしながら、
これ以上無い笑顔を見せたリカと合流した。
「いい加減どこ行くか教えてよ~。」
「とりあえず電車で。」
「・・あっ!何気に初デートだね!」
ドライブする車も無ければ、クリスマスにあげるプレゼントも大したものじゃない。
リカは真心で“そんなこと気にしないで”といつも言ってくれたけど、
お金が無い事を言い訳にしていた自分と決別しようとしていた。