幼馴染との正しい距離感
「もー…
起こしに来てくれたのはありがたいけど
ああいうのは困る」

「ごめんごめん
あんまり気持ち良さそうに寝てるから
つられちゃって、つい」

「つい、じゃなくてね…?」

「それに、つむぎちゃんの感触が気持ちよくて
離れがたくなっちゃって」

「……こーくん、恥ずかしいからやめて」



学校までの道のり。


隣で、無邪気に笑いかけてくるこーくんに
私は真っ赤な顔でお願いする。



……恥ずかしすぎて死にそう。




こーくんこと矢橋倖(やはしこう)君は
隣の家に住んでる男の子。


小学校の頃からの付き合いで
まあ、ようするに幼馴染。


かわいくて、かっこよくて、優しい自慢の幼馴染。


今朝は、なかなか待ち合わせ場所に来ない私を
心配して家まで迎えに来てくれた。



……寝過ごした私が悪いんだけど


こーくんもこーくんだ。

いくら気心が知れているからって
女の子のベッドに潜り込むなんて。


それに、お母さんも。

いくらこーくんだからって
年頃の娘の部屋に簡単に通すなんて…



確かに、こーくんは普段から
しょっちゅう私の家に遊びにくるし


昔から一緒だから


今さら寝顔を見られたり

パジャマ姿見られたり

ぼさぼさの髪を見られたって



……

……

…………まあ、少し恥ずかしいけど、許せる。



ただ、こーくんは寝起きだと
予想外の行動するから。


今朝みたいな。



……ああいうのは困る。



どきどきしすぎて
心臓がいくつあっても足りない。


そうでなくても普段から
スキンシップが激しいっていうのに。
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